写真:伊知地 国夫
2025年1~2月 薄氷の結晶
断熱性の容器に水を入れ冷凍庫で冷やす。表面に薄く氷が張ったころに取り出して2 枚の偏光板の間にはさむと、もともと無色の氷に鮮やかな色彩が現れる。このような色彩は、偏光板の間に入れたものが複屈折性という光学的な性質を持つときに現れる。氷は水の結晶の集まりで、この写真から複屈折性をもっていることもわかる。結晶の粒の大きさは水を凍らせるときの速さの影響を受け、早く凍ると粒は小さく、ゆっくり凍ると粒は大きくなる。
2025年3~4月 クラドニ図形
円形や四角形の鉄板の中心を、上下に振動する棒に取り付ける。細かい白い砂を均等にまき、棒を振動させると、特定の振動数で鉄板が共振し、一様だった白い砂に模様が現れる。振動が強いところ(振動の腹)には砂が集まりにくく、弱いところ(節)に 集まるためだ。振動数を変えると腹と節の位置が変わり、独特の模様が生まれる。このような手法を研究した物理学者エルンスト・クラドニにちなんで、「クラドニ図形」と呼ばれている。 (各図形の振動数は、左上810Hz、左下279Hz、右上725Hz、右下187Hz。)
2025年5~6月 野菜の花
写真は6 種類の野菜の花だ。何の野菜の花かわかるだろうか。左上はツルレイシ(ニガウリ、ゴーヤ)。ウリ科の花でキュウリやヘチマも似ている花が咲く。上の中央はオクラ。アオイ科で大きい花を咲かせる。右上はニラの花でヒガンバナ科。細長い5枚 の白い花びらをつける。下の3 枚はナス科で、左からナス、ピーマン、トマト。下向きに咲き、先のとがった花びらが特徴的だ。 野菜の花は観賞用になることは少ないが、それぞれに特徴的な花が咲き興味深い。
2025年7~8月 水中のドライアイス
ドライアイスは二酸化炭素の固体で約− 79℃ととても低温だ。水の中に入れると、水温が約100℃も高いため急激に気体になって大きな泡がでる。泡はきれいな白色をしていて、低温のためまわりの水からの水蒸気が冷やされて霧状になっている。油やアルコールの中にドライアイスを入れてみると、泡の中には水蒸気が無く、白くならずに透明のままだ。ドライアイスは、通常の気圧の元では固体から気体になるが(昇華)、圧力の高い状態では液体になる。
2025年9~10月 色水を凍らせる
水に食紅を溶かして黄色や青色の水にする。この水を凍らせると、色のついた氷になるだろうか。冷凍庫で断熱材でくるんでゆっくり凍らせてみると、写真のように色水だけが真ん中に集まった。水が凍る時に、不純物を排除して結晶化しよう とするので上部は透明の氷ができ、結晶化するときに追い出された食紅の色素や空気が集まってしまう。急速に凍らせると排除できずに色つきの氷ができる。
2025年11~12月 ビタミンCの結晶
ビタミンCの粉末をスライドガラス上で水に溶かし乾燥させると、再び結晶が現れる。偏光顕微鏡で観察すると、もとは無色の結晶に鮮やかな色彩が現れる。偏光顕微鏡はステージ上の試料が2 枚の偏光板にはさまれる仕組みになっている。 このような状態で試料に複屈折性という性質があると、その性質の大きさと厚みの差が色の違いとなって現れる。同じ溶液で何度作っても同じ結晶模様にはならない。そこが結晶を偏光顕微鏡で撮る面白さでもある。