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日本の蝶シリーズ

蝶の模様は種それぞれでいろいろな変化があって興味がつきません。
中でもウスバシロチョウの透明に近い羽、墨流しのようなスミナガシ、石垣模様のイシガケチョウの面白さを取り上げました。また、新天地を都会に求めたツマキチョウ、キアゲハはセリ科植物の分布の広さから世界へ、里山を好むオオミドリシジミの生活を紹介します。

 

2005年1~2月 ウスバシロチョウとムラサキケマン


2005年1~2月 ウスバシロチョウとムラサキケマン

卵の中で越冬した幼虫は“光の春”が始まる1月下旬~2月初めの節分の頃に孵化します。
日本の蝶の中ではもっともはやく活動する蝶のひとつです。蝶の食草であるムラサキケマンは越年草で幼虫は付近の枯葉の上で日なたぼっこをしながら時折食草に上がり葉を食べて成長していきます。はじめは2mmぐらいだった幼虫が4月初めには3cmぐらいの大きさに成長していきます。成虫も幼虫も太陽の光をとても好み、天気の悪いときには全く活動することはありません。
幼虫の食草のムラサキケマンは日本各地の道端で紫色の花を咲かせますが、ウスバシロチョウは低山地に多くの植物の分布とは必ずしも一致しません。アゲハチョウの仲間ですがフワフワと飛び白色なのでシロチョウのようにも見えます。また、ケマンとは華蔓のことで仏堂内陣を荘厳にするため掛けられる装飾のことで、花や葉がその形に似ているのでその名が付いています。

 

2005年3~4月 ツマキチョウとハナダイコン


2005年3~4月 ツマキチョウとハナダイコン

ツマキチョウは春1回だけ出てくるモンシロチョウより小型のシロチョウです。本来は郊外の田畑や低山地に多いチョウでしたが、1970年以降、都会地にアブラナ科のハナダイコンが増え、これに卵を産み、今では都会ではかなり普通に見られる蝶となりました。ハナダイコンは中国東北部原産の植物ですが、日本には明治初年に入りました。ただし本格的に栽培植物として導入されたのは1957年からで、それ以降各地の花壇に植えられていきました。今は半野生化して広まっています。赤紫の美しい花を付けます。呼び名もムラサキハナナ、ショカツサイ、オオアラセイトウといろいろあります。ショカツサイというのは諸葛孔明が非常食として植えたといういわれから来ているようです。

 

2005年5~6月 キアゲハとセリ科植物


2005年5~6月 キアゲハとセリ科植物

キアゲハはアゲハチョウ科の中でもっとも広域に分布を広げた蝶です。北アフリカからヨーロッパ全域、シベリア、極東ロシア、また中東、アジア、さらにベーリング海を越えアラスカ、北アメリカまで到達しています。それはこの蝶の高温乾燥砂漠地、冷涼高山地、高緯度地方、日本のような温帯地域とどこででも生活できる生命力の強さにあります。また本来のミカン科のものを食べる食性からセリ科への食性拡大も大きく影響したと思います。世界各地でセリ科植物の代表ニンジン、パセリ、ミツバ、セロリの栽培が広まったのもこの蝶の分布の広がりを助けました。
ただしキアゲハもセリ科も高温多湿地方である亜熱帯や熱帯地方は苦手なようです。

 

2005年7~8月 スミナガシとアワブキ


2005年7~8月 スミナガシとアワブキ

夏期にコナラ、クヌギを中心にした雑木林に入ると、その樹液に中型の蝶のスミナガシがオオムラサキ、スズメバチ、カブトムシ、クワガタムシと競って見ることができます。
広げた羽の黒と白の模様はとても地味ですが、独特な赤い口吻は派手で盛んに樹液を吸っている光景は素晴らしいです。飛び方は極めて速いので樹液に来た時が観察時です。蝶の和名は“墨流し”に似ていることから付けられました。
墨流しという芸術技法は日本古来に生まれ中国に渡り“波紋花様”という中国語になり、さらにそこから西洋に伝わり色彩豊かなマーブリングという技法に発展しました。コーヒーにミルクを入れたときの模様も墨流しの一種です。幼虫の食樹としてのアワブキは本州・四国・九州に生える樹で、枝を燃やすとその切り口から盛んに泡を吹くので泡吹きの名が付いています。

 

2005年9~10月 イシガケチョウ・イヌビワ


2005年9~10月 イシガケチョウ・イヌビワ

イシガケチョウはその模様が石垣に似ていることから名づけられました。花や地面におりているときは必ず羽を広げて静止し、周囲の環境と一体化し見事な保護色となっています。西洋では世界地図のようにも見えるので“地図蝶”の名前がつけられています。東洋と西洋の見方の違いがこの蝶において見られ、大変興味深いです。幼虫の食樹はイヌビワ、カジュマル、アコウ、イチジク等で、蝶は紀伊半島から西の地方に見られます。その主食樹であるイヌビワは関東地方以西の主に海岸近くの暖帯林に多く見られます。花はイチジクと同じように、のう果といって花托のふくらんだ中に花をつけ、外に開くことはありません。雌雄異株で、なかにはイヌビワコバチの虫こぶになっているものもあります。イヌビワコバチは居候をするだけでなく、受粉するのに役立っています。

 

2005年11~12月 オオミドリシジミ・コナラ


2005年11~12月 オオミドリシジミ・コナラ

この頃は少なくなってしまった平地の雑木林に晩秋から冬に入ると、落葉したコナラの実生や下枝の木またに、直径1㎜に満たないオオミドリシジミの白い饅頭型の卵に出会えます。卵内にはすでに幼虫はいるのですが、早春の新芽が吹くまで決して孵化することはありません。じっと春が来る日を待っているのです。昆虫の越冬の仕方にはいろいろありまして、成虫、幼虫、蛹それにこの蝶のように卵であったりと千差万別です。
何もいないかに見える晩秋から冬でも、その気になって探してみると様々な昆虫たちの冬の生活に出会うことができるのです。里山の雑木林を造ってきた食樹のコナラ・クヌギなどは日本各地の日当たりのよい山野に普通に見られます。春、細い尾のような花穂にたくさんの雄花を吊るします。雌花は少し下に枝の脇に咲き、秋にはドングリを実らせます。以前は里山では数年ごとに伐採してほたぎや薪炭を作り、里山として守られていました。

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